私的映画2007

travelation2007-12-09

【1】ルナシーヤン・シュヴァンクマイエル(2005)
http://www.a-a-agallery.org/event/lunacy/
左脳的な気持ち良さ(感情)と右脳的な気持ち良さ(論理)の両立が小気味良過ぎる。
内容は精神病院が舞台(本物の患者も出演)。映像は真骨頂のシュルレアリスム
モチーフは『「狂った人間」と「正常な人間」の境目はどこに?』、
『「規律」と「自由」の境目はどこに?』、『「主体」と「客体」の境目はどこに?』
などなどの「境目」について。メタフォリカルに世界と私を暴く作品かなと。




【2】書を捨てよ、町へ出よう/寺山修司(1971)
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD19500/story.html
徹底的に「アイロニカル」で「自由と不自由」を行き来する濃密な表現。
寺山的な「これでいいのか?」とバンプ的な「それでいいんだよ」の差を考えてしまう。


 

【3】運命じゃない人/内田けんじ(2005)
http://www.pia.co.jp/pff/unmei/index.html
「想定内」だけで安心したいのが我々の心理。でも「想定外」なのが世界の真理。
人知ではどうにもならんことが世界にはあることを面白可笑しく描いた佳作。




【4】カフカ 田舎医者/山村浩二(2007)
http://www.shochiku.co.jp/inakaisha/
不条理作家カフカ超短編をアニメーションで映像化したエンターテイメント。
底なしの絶望をそれでも笑えることこそが希望なんでしょうか、カフカさん。




【5】LAST DAYS/ガス・ヴァン・サント(2004)
http://www.elephant-picture.jp/lastdays/
「Hello」を「How Low?」と茶化さずにはいられない時代に生きた詩人の最後の日。
ミイラ取りがミイラになってしまったカートの苦悩は誰も計れないのかな。




【6】硫黄島からの手紙クリント・イーストウッド(2006)
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/
理不尽な戦争だから感情的に「反戦」を叫ぶのもよく分かるが足りない。
理不尽な社会を生きるしかない先人が変えようと守ろうとしたものを学ばないと。




【7】バベル/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(2007)
http://babel.gyao.jp/
グローバリズムの「繋がり・異なり」を描き現代の作法を問う映画。
「異なる」ことを知って初めて「繋が」り得るリベラリズムの本義を知る。




【8】オールド・ボーイパク・チャヌク(2004)
http://www.oldboy-movie.jp/
「復讐は無自覚に訪れる」し「無自覚は復讐を生みだす」のだろう。
極めて倫理的なメッセージにこそ寛容を手に入れるフックは隠れているのだろう。




【9】戦場のピアニストロマン・ポランスキー(2002)
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3295
すべてが奪われていく文字通りの戦争の悲劇は、あらかじめ奪われるものがない
透明な戦場に生きる不死身の現代人にとっては逆説的に響いて混乱する。




【10】トニー滝谷市川準(2006)
http://www.tonytakitani.com/
村上春樹のクールで奥深い視点を殺さずにむしろより大きくした作品。
淡々としたリズムに喪失と再生のテーゼが色濃く出ていてウェルメイド。

知に働けば蔵が建つ/内田 樹(2005)

記号的な想像力は「すでに知られているもの」を繰り返し複製することはできるけれど、新しいものを創造することはできない。
「未知のもの」につながるのは「強い想像力」だけである。
強い想像力だけが現実を変成する力を持っている。