『青い車』

travelation2006-11-21

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=4786
買ったのに1回しか観ていなかった「青い車」を鑑賞。やはりキャスティングがいい。ARATA麻生久美子宮崎あおい田口トモロヲも肩肘張らない演技。そして、原作が24ページの漫画を空気感を壊さずに90分の映画に仕立てた奥原監督の手腕も見事。
内容は『息子の部屋』(仏)を想起させるような「喪失」と「再生」の物語。と単純に括れない日本の東京の若者の日常。舞台は、「会社」や「学校」や「家族」といった大いなる共同体がバブル後に跡形も無くボロボロと崩れさった90年代以降の空洞化した日本社会。
よって人それぞれの「よく分からない」リアリティが生まれた。つまり「価値観の多様化」。そして、リチオやこのみやアケミが見せるように「家族」や「恋人」でさえももはや「よく分からない」のだ。
でも、「よく分からない」けど(から)「繋がりたい」のが本音。それぞれ孤独が苦しいので。そんな敏感な関係性だからこそ、ふとした事で切れるし、そうなりたくないから、踏み込みたいけど、踏み込めないアンバランスさで、必死で繋がろうとする。
それはリチオの目線から、このみの目線から、アケミの目線から掘り下げる事が出来るが、映画を見れば分かるので置いといて。つまりは、そんな90年代以降の人と人との関係性と踏み込んでしまった時に生まれる痛みと再生をかくも見事に描き切った稀有な作品が『青い車』。
『3丁目の夕日』のようなありもしないノスタルジーで鈍感に涙するより、こっちのほうで敏感に涙するほうが何百倍もいいです。
それにしても、曽我部恵一の音楽が感涙必至です。かっこいいな〜、ギター弾ける人は。