疾走/重松清(2003)

14歳の少年と少女が主人公。バブルが崩壊する寸前の物語。地方→大阪→東京が舞台。「家庭崩壊」、「学校化」、「郊外化」、「心的外傷(トラウマ)」、「大きな物語の不在」、「宗教」、「入れ替え可能性」、「価値観の多様化」、「社会の不条理」などなどポストモダン(近代過渡期)的キーワードがたくさん転がっている小説。そんなポストモダン的事象のど真ん中で生きる14歳の少年と少女の「深い絶望と微かな希望」が通低音。
感想。面白くはなかった。原稿用紙1100枚も使うほど重厚な作品なのに、薄味に仕上がっているから。書いていることは過酷で苛烈な運命だとは思うけど、むしろそれがあまりにもわざとらしいし、信頼出来ない。
こういうテーマを描くなら、岡崎京子の言うような「平坦な戦場」こそ描くべきであり、そんな「小説のような」過酷で苛烈な運命は、リアリティがないのである。それでも読み切ったのは、やっぱり筆致が良いから。さこは流石です。