潜水服は蝶の夢を見る/ジュリアン・シュナーベル(2007)

travelation2008-03-05

いわゆる「喪失」と「再生」の物語。
その二つの落差が大きいほど「感動」が生まれるのなら、
この作品はおすぎ御大も賞賛するほど「感動」に溢れている。
でも、それ以上に「想像力」と「記憶」の大切さと、その2つの豊潤さが人生に彩りを与えることを知る。

「想像力」と「記憶」は、絶望の淵にいた主人公が「自分を憐れむことを止める」きっかけにしたキーワードである。
(この瞬間、映画の「視点」も「主人公のみ」から「主人公のまわり」に変わり、一気に世界観が変わる)

そうか、
己の「絶望」をコミュニケーションツールにする卑小さより、
己の「希望」をコミュニケーションツールにする寛大さこそ、
『蝶の夢を見る』ために必要な心構えなのだろう。

そうすれば自ずと、「想像力」と、その糧になる「記憶」が豊潤さを持ち始める。
そしてその後の人生も彩りを持ち始める。

普通の毎日から激変した毎日を過ごさざるをえなくなったとき、
こういう振る舞いが出来る「強さ」と「ユーモア」も大事なんでしょうな。

ネタバレですが、流氷山脈が崩れるシーンと崩れた流氷山脈が元に戻る(現実にはありえない)シーンの対比こそ、
「想像力」と「記憶」の大切さを教えてくれるメタファーだと。